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作品ID:4

こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約4652文字 読了時間約3分 原稿用紙約6枚


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遠藤 敬之 ■ふしじろ もひと 


小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

超短編集(1)?(7)

作品紹介

批評感想、どちらもOKですが、いかに短い文章(500字くらい)で小説を書くかということに主眼を置いていることをご理解の上お願いします。

(1)が500字よりかなり多いのは、小説のプロローグ部分だったからです。

でも残念ながらフロッピーが壊れて、本文の方は永遠に失われてしまいました。

今回こうして日の目を見せてやれてよかったです(笑)。


(1) 砂漠幻想



 持っていた食料も水も疾(と)うに底をつき、砂漠に迷い込んでからどれほど経ったものか、既に男には、分からなくなっていた。

 眼は霞(かす)み、意識朦朧(もうろう)としつつも、もう一歩行けば、あと二歩行けば、水場(オアシス)が……都市(まち)が見えて来るのではないか……そんな僅(わず)かな望みに縋(すが)り、男は重い体を引きずり進み続ける。



 だが、幾らも行かぬうちに足が滑り、倒れ込んでしまう。

 体力は限界に達し、もはや起き上がることもできない。

 遂に死を覚悟し、それでも生き延びようとあがく男の眼に、その時、信じられないものが飛び込んで来た。



 天上には、生きとし生ける者を焼き尽くさんと燃え盛る火輪、地には一面に広がる砂、砂、砂。

 その間を陽炎(かげろう)が揺らめき、つなぐ。嫌というほど見慣れた景色の只中に、何者かが立っていたのだ。

 少し距離があるため、瞳の色や表情の細やかなところまでは分からなかったが、その凄艶(せいえん)な紅い唇は、幽(かす)かに微笑んでいるかに見えた。



 一瞬、助かったと思ったものの、こんなところに人がいるわけがない。

 ……とうとう幻覚まで見えるようになったか。男は呟(つぶや)いた。

 しかし男の思惑には関わりなく、幻のように現れた女は突如、舞い始めたのだ。



 流麗(りゅうれい)な薄紫色のドレスから覗くすんなりとした足が、軽く砂を蹴ると、金のサンダルが砂漠の眩(まばゆ)い日光を反射してきらりと光り、緩(ゆる)やかに体が空中へと押し出される。

 華奢(きゃしゃ)な腕の動きは優雅で、白鳥の羽ばたきそのもの。

 腕や足に嵌(は)められた何本もの細い金の輪が触れ合う、ガラスベルのような澄んだ音が、熱い風に運ばれて砂漠中に響き渡ってゆく。

 一連の動作につれて、背の中ほどまである紫がかった紅い髪が生き物めいた動きを見せ、ある時は か細い腕に、ある時は美しい顔に、またある時は眩(まぶ)しいほど白い胸元にふわりと纏(まと)わりついては離れる。



 美女が無心に舞う空間、そこだけがぽっかりと、重力が消え失せているかのようだった。



 初めこそ警戒していた男も、次第にその舞に引き込まれていき、しまいには飢えも渇きも暑さすら忘れ、ぽかんとだらしなく口を開けて、只管(ひたすら)天女と見紛(まご)う女の舞踏に見とれてしまっていた。

 永遠に、この飛天の舞を見ていたい……男はそう希(こいねが)う。



 しかし、美しい刻(とき)は不意に終わりを告げた。

 疲れも見せず踊っていた女は、始まり同様、唐突に動きを止めたかと思うと、その輪郭(りんかく)は次第に曖昧(あいまい)になり、ついには霞(かすみ)のごとく薄らぎ、空中に溶け込んでいく。



 女の姿が完全に消えた後には、眼を見開いた男の死体が一つ、転がっていた。







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 (2) 野良犬



 雨は冷たく、傘はその冷たさを遮(さえぎ)ることができずに、雨は容赦なく、心にまで降りかかる。

 荷物一つ持たず、けれど心にはひどく重いものを抱えて、僕は独り雑踏に紛れ、家路をたどる振りをする。



 僕の前を、一匹の犬が小走りに横切っていく。

 泥にまみれ、雫を垂らしたそいつに首輪はない。

 ……お前にも帰る家はないのか、犬……僕はつぶやく。



 ドアを開ければそこには笑顔、いつかそんな日が来るかも知れない、淡い希望を持ちながら、行き先も決めず雨の中、ひたすら僕は歩き続ける。









☆─────────────────────…‥‥・・・・ ・ ・ ・  ・   ・    ・    ・    







 (3) 月の絵本





 少年は幽囚(ゆうしゅう)の身だった。

 黴(かび)臭く難解な本を無聊(ぶりょう)の友として、祖父の逆鱗(げきりん)に触れぬよう息を潜め、小さな天窓から覗く四角い空で時を知った。

 食事は徐々に減らされて、埃塗(ほこりまみ)れの室内を漁(あさ)っても何もなく、飢えに突き動かされて書棚によじ登っても、自由な空には届かない。

 バランスを崩し落下した少年が苦痛に顔を歪ませた時、一冊の本に手が触れた。

 それは、月の表紙と天使の挿絵(さしえ)が美しい絵本だった。



 少年は、あらん限りの想いを込めて母に似た天使を見詰めた。

 唇は動いても、声は出ない。

 彼は、語る言葉を持たぬ子供だった。

 両親の死で声を失った彼を、祖父は外聞が悪いと疎(うと)み、書庫に閉じ込めたのだ。



 少年は眼を閉じた。涙が頬を伝う。



 その時、風もないのに絵本の頁(ページ)がぱらぱらとめくれ始めた。

 同時に、慈(いつく)しむように降り注いでいた月光が弾け、銀粉のような光が部屋に飛び散る。

 少年の背中に、幻の翼が生まれていた。

 月は、彼の願いを知っていたのだ。

 喜び羽ばたく少年の体は次第に透き通り、無数の光り輝く粒子となって、絵本の中へと吸い込まれていく。





 翌日、絵本には微笑む天使が一人増え、漂っていた数枚の羽は、天窓から差し込む朝日が当たると、夢の名残のように消え失せた。











☆─────────────────────…‥‥・・・・ ・ ・ ・  ・   ・    ・        







 (4) 夜の影





 あれは何? 

 闇の中に浮かび上がる、朧(おぼろ)で、眼をいくら凝らしてもかすかな輪郭しか捉えられない、漠としたもの。

 蠢(うごめ)いているようでもあり、不動でいるようにも見える、名もなく、性(しょう)もないもの。

 その、いわく言い難いものに私は呼びかけようとするが、いつも名前は見つからない。

 闇夜にざわめく木立のように、それは私に、あるときは囁(ささや)き、あるときは語りかけ、またあるときは詩(うた)を歌って聞かせる。夜の詩を。闇の声で。

 私はそれに見入り、耳を傾ける。

 否、眼で見ているのではない。声? それも耳で捉えてはいない。

 私の心臓の上を僅(かす)かになぞり、それは通り過ぎてゆく。

 祈りにも似たそれを捕らえ、私は魂の糧(かて)とする。







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 (5) ノアの洪水 <その一>



 神に選ばれし者には、その身体に白き聖痕(スティグマ)が現れる。

 刻印を受けし神の子は、日の出と共に神へ祈りを捧げ、それに応えて神は我らに慈雨(じう)を下さる。

 ある日、私の体に徴(しるし)が現れた。

 喜び勇んで私は神殿に赴き、禊(みそぎ)をしては、毎朝敬虔(けいけん)なる祈りを捧げた。



 だが年月が過ぎるうち、地上は争いに満ち、しまいに幾ら祈っても雨は降らなくなった。

 地は乾き、皆も渇いて私を責め、ついに私は神の怒りを買った罪で処刑されることとなった。

 ──ああ、神様。私の何がいけなかったのですか。教えて下さい、神様。

 四肢を引き裂かれる激烈な痛み。目の前が暗くなり、私の意識は途切れた。



 目覚めたとき、私は水に浮かんでいた。見回しても周囲に陸地はなく、空は抜けるように青い。

 風もなく、何の音もしない。

 罰を下されたのだろう、神が。堕落した人々に。

 それでも。

 人々のために、私は泣いた。

 ──神様。

 答えはない。



 どれくらい経ったのだろう、何かが太陽の光を遮(さえぎ)り、私は顔を上げた。

 巨大な船が、目の前に聳(そび)え立っていた。

「鳩よ、陸地を探してきてくれ」

 舳先(へさき)に立つ男の手から飛び立つ白い鳥、つられるように私の体もまた、空中へと投げ出される。

 無くした筈(はず)の両腕は翼となって戻ってきていた。

 ──神様。

 涙が水に滴ると、銀の魚が跳ねた。







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 (6) ノアの洪水 <その二>



「ただ今! お母さん、お祖母ちゃん家に行ってる間、ちゃんと餌と水、やってくれた?」

「お帰り。あ、ご免、水、忘れてたわ」

「えーっ!?」

 少年は叫び、慌てて飼育ケースを覗いた。

 乾き切った土の上に、彼が一月前、白い印をつけた蟻が、バラバラになって死んでいた。



「……やば。皆死んじゃったのかな。夏は乾くの早いなぁ……毎日霧吹いてって言っといたのに」

 少年は巣穴を掘り返してみた。たくさんの蟻が、驚いたように出て来る。

「……なんで、僕が印つけたヤツだけ死んでんだよ? ちくしょう!」

 彼は無性に腹立たしくなり、いきなり飼育ケースに大量の水をぶちまけた。

 蟻は全て溺れ死んだ。







☆─────────────────────…‥‥・・・・ ・ ・ ・  ・   ・    ・    ・    

 





 (7) メビウスの輪

 

「きゃーっ!」

 少女はティーカップを取り落とした。

 口をつけようとした薄茶色の液体の底には、根元から切り落とされた人間の指が一本、沈んでいたのだ。



 夕立に遭い、この洋館に雨宿りを求めた彼女を館の主は歓迎し、応接間に通して暖かい紅茶を振舞ってくれた……のだったが。

 粉々に割れた破片の間から、尺取虫(しゃくとりむし)のように指が這(は)い出て、自分目掛けて少しずつ、だが確実に近づいて来るのを見た時、少女の中で何かが壊れた。



「きゃあああああ!」

 再び彼女は悲鳴を上げ、部屋を走り出た。

 応接間は玄関を入ってすぐだったはずなのに、行けども行けども出口は見つからず、窓の外には紫の雷光が走る。



 息を切らし、どれほど走ったのだろう。

「あったわ!」

 少女はついに玄関に辿(たど)り着いた。

 手が震えて力が入らず、ドアノブをがちゃつかせても、なかなか開かない。



「助けて、誰か!」

 どんどんドアを叩きながら、必死の形相で少女は叫ぶ。

「お願い、開いて!」

 改めてノブを回し全体重をかけると、ぎいーっと嫌な音を立てて、ようやくドアは開いた。

 しかし。



「──きゃっ!?」

 扉の向こうには、青ざめた顔をした、館の主が立っていた。

 その後ろには館の廊下が、延々と続いている。

「そ、外じゃない!?」



「……どちらへ行かれるんですか? まだ雨が降っていますよ……ほら、こんなに……」

 差し出すその手から、指がボトボトと落ち始める。

 やがてそれは顔へと波及し、眼が、耳が、鼻が次々に落ちてゆき……。

「きゃーっ!」

 少女の絶叫を、雷鳴が掻(か)き消す。

 

 雨の日、岬の洋館に足を踏み入れてはいけない。二度と出られなくなるのだから。

後書き

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作者 流河 晶
投稿日:2009/11/01 22:30:33
更新日:2009/11/01 22:30:33
『超短編集(1)?(7)』の著作権は、すべて作者 過去ログ(管理人投稿)様に属します。
HP『

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