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作品ID:440

こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約4316文字 読了時間約3分 原稿用紙約6枚


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小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

壊せない壁

作品紹介

前作、消えたい気持ちでもやもやしてしまった部分を個人的に埋めたいと思い、作成した小説です。
今回の舞台は学校です。こうすれば、より壁が分かりやすくなると思います。
健全者の中一人だけの障害者。軽度とはいえ、やはり違うところは違う。
異物を排除する人間の本能と言うのは、どうしてこういうときまで反応してしまうんでしょうか。
これも文明が発展して、そういったものが生まれてきてしまったせいか、あるいは差別と言う根本の解決のない問題のせいなのか。
どのみち、どちらが悪い、どちらのせいだなどという問題ではないのだと言います。
仕方ない、そう考えるのが。一番の解決方法なのだそうです。


「おはよー!」
「お、ぉはよぅ……」
 朝、声をかけられた。単なるクラスメイト。友達とは呼べないけど、他人でもない微妙な距離。
 一番安心する距離だ。だって相手は自分に踏み込んでこない。触れようとしない。こちらも触れる必要なんて無い。だからだ。
「……」
 俯いたまま移動し、席に座る。周りは何処にでもある学校の朝風景。みな、話してるのが大半だ。
 少女に話す相手はいない。というのも、彼女はわざわざ遠くの学校に進学した。つまり、中学生時代の知り合いが一人もいない、一人孤独に進路範囲ギリギリで尚且つ自分が入れる学校に入った。
 自分は障害者なのに、何で普通の学校にいるんだろう。
 この学校に通って早3年。卒業も近いこの時期でも、いまだに考える。
 仕方ないと言えば仕方ないのだ。彼女の障害はかなり軽度で、障害者の学校に行くにはあまりにもレベルが高すぎるのだ。だから拒否された。
 怖い。と正直今でも思う。だって相手は自分を差別していた中学のクラスメイトと同じ健全者。いつ、障害とばれてしまったら何をされるか分からない。ばれないように、こそこそと高校生活を送ってきた。
 クラスの一部の派手好きな女子はそれを「友達付き合いの悪い根暗」だとか、「人見知りの激しいつまんない子」だとか勝手なことを言ってることは知っていた。どうせ根暗だし、つまんない子だ。
 開き直ると言うか、彼女はもう諦めている。私は普通の友達なんて出来ない、絶対壊せない壁がある。長時間話してるとそれが露呈する。だから彼女は同級生との長時間の会話を拒否していた。今となっては同級生も「そういう子」という認識で収まっている。だが彼女は一種の被害妄想のようなものを抱いている。
 ――自分を嘲笑っている。何かが違う私を影で笑っている。
 警戒するように、自分が傷つかないように人を拒む。慣れというのは、いいコトと悪いことがあるが、この場合はいいことに働いた。彼女の周りには、世話好きのお人よしか、単なる馬鹿しか集まらなくなった。前者は彼女はびくびくしながら受け入れ、後者は強い反発で拒んだが。
「おはよ。今日進路指導あったよね?決まってるの進路?」
「おはよぅ……。進路は、もう、決まってる」
 前の席の子が気さくに話しかけてくれた。彼女は一年の頃からずっと一緒で世話を焼き続けてもらっていた。クラスの評判は酷いもんだ。「口うるさい」とか。「細かいところまで口出ししてくる」とか。つまりは彼女も若干浮いていた。だが少女にとっても同じだった。一度強く拒んでも、次の日何事も無かったかのように話しかけてきた。もうだめだ、と諦めて以来ずっと一緒に過ごしている。
「へえ。じゃああとは卒業するだけ?」
「そう……」
 ぼそぼそと喋る少女に対して、ふーんと言って彼女は言う。
 学校の先生と少女しかしらないが、彼女の進路は就職だ。それも障害者の支援センターのような場所。いくら軽度でも就職ともなれば話は別。母は障害者手帳なるものをつくり、少女に渡した。これがあると色々便利らしい。だが同時に世の中に自分は障害がある、と宣言してるようなもの。自閉症など重い障害なら見れば分かるが、自分は軽度の中でも最も軽度であり、一般人と変わらない。
 少女はこれが嫌だった。どんな差別を受けるか分からない。あることないこと言われて傷つくのはもう嫌だ。
 中学時代は酷かった。少女の場合、途中で特別クラスに編入したのだが、そのせいで元クラスメートに凄まじい差別やいじめを受けた。教科書を破られる、無視される、陰口、罵倒。学校側は何も対処してくれなかった。その時点で少女は諦めて傷つくだけにした。反抗するのをやめた。どうせ誰にもこの心の悲鳴など理解されない。諦めて、受け入れるのが一番楽だった。
 これを母は逃げていると糾弾した。真正面から戦えといった。悪いのはあっちだ、こちらは被害者だといった。少女はその時、母に始めて感情を思い切りぶつけた。
「うるさい! ……お母さんに何が分かるの!? お母さんは普通の人のクセにさ! 私の苦しみの何が分かるの!? 戦えって、そんな簡単に言わないでよ! 何で向き合わなくちゃいけないの!? 向き合って解決するの!? 先生達にだって言った! だけど現状は変わんない! それでも戦えっていうの!? 一人で多人数と? 何人いるかわからないような、周りが敵だけしかいない状況で!? 馬鹿言わないでよ! 他人事だからそんなこと言えるんでしょ! だったら私の立場しっかり考えてよ!! そもそも、あっちが悪いわけでも、私が悪いわけでもないでしょ!? 優劣を決まってるのは事実、言ってることも事実!! 私は障害を持ってて、あの人たちより無能なのは事実なの! 事実を言われてなんでこっちが被害者になるの!? 負けてるのも本当だし、私がおかしいのも本当だよ! 仕方ないんだよ! いじめなんて、なくなるわけ無いじゃない! 健全者と仲良くなんてできるわけないの! 根本的に違う異物同士が仲良くするほうが稀なんだよ! 分かってよ、お母さん。逃げていいでしょ、逃げるのが私は一番楽なの。立ち向かうほど心強くないもん……」
 心情をぶちまける頃には、少女は泣いていた。涙を拭こうとせず、俯いて部屋を飛び出した。自分の部屋で思い切り泣いた。それだけだった。
 学校を行きたくなかったが、彼女は黙って通った。だってそれだけでよかったから。無反応、それを貫くのが一番楽だった。最初は調子に乗ってやり続けた連中は、少女のそのあまりの無反応さ、他人面に遂に面倒になったのか、徐々にだが収まっていった。
 最終的には精々陰口を言われる程度にまで。その程度だったらその頃の少女にはどうということはなかった。心は壊れつくされ、もう反応する涙は枯れていた。
 少女の場合、それだけではなかった。特別クラスのほうでも、彼女の立場は微妙だった。他の人たちはみな重度の障害、その中に健全者に近い彼女が入ったことで、波風が立ってしまい、入って早々喧嘩になった。これは少女が勝った。頭にきて口で罵倒を続けた。普通クラスだった影響もあり、的を射たその言葉に相手はいとも簡単に屈した。元々糾弾されることに慣れていないことがあったのだろうが、少女はそれが憎かった。
 私がこんな目にあってるのに、なんでそんなことを言われなくちゃいけないの!?
 そういう思いが口から罵倒をマシンガンのように連発する。その一発一発が相手の心を打ち壊し、その相手は次の日からしばらく学校に来なくなった。
 先生は怒った。言っていいことと悪いことがある、今回は相手が悪いけれど、過剰防衛はいけない。と悟らせるように最後には優しい、園児にいうような口調で。それが少女の怒りにまた火をつける。
「先生、私間違ったこと言ってません。ストレートに言っただけです。陰で言われるようなことを表で言っただけです。それの何が悪いんですか? 結局、言われることでしょ? それを本人に言うだけ易しさがあるんですけど。言っていいこと悪いこと? あっちが先に手を出した、それだけじゃないですか。だから私は言葉を選んで彼にぶつけました。あんな、年も考えず園児みたいに我が侭を無理やり通すような馬鹿には丁度いい薬だったと思いますが」
 それが自分の嫌っていた差別だと知りながらも彼女は言葉にした。それだけ頭に来ていた。
 先生は固まり、少女にその言葉を今後この教室で言うことを禁じた。言った場合は元のクラスに戻すとすら脅して。少女は吐き捨てるようにこう最後に言った。
「私は謝りませんよ」
 その言葉通り、彼女は頑固に謝罪を拒んだ。母に言われようが、そこで仲良くなった子達に言われようが、それだけは通した。意地だった。これを受け入れたら、自分の行った行為を否定してしまう。
 自分は間違ってない。事実を言っただけ。その心情が、諦めと混ざり合って腐敗し、もうなんと言う感情なのか、少女には分からない。
 結局、相手は学校に来て、少女に何故か謝罪した。曰く、目が覚めたらしい。甘えに。今まで障害を楯にして、色々なことから逃げていた。お前に言われて俺は目が覚めた。もっと色々挑戦してみる、と。最後にはありがとうとすら言われた。少女は困惑した。お礼を言われる理由を理解できなかった。だから困惑し、それが疑心に繋がって更に人を拒むようになった。
 特別クラスは楽しかった。だけど、根っこの部分で誰も信用してなかった。だから親友と呼べるような親しい友達がいなかったのは仕方なかった。
 今でこそあのクラスのことは苦笑い程度になったが、やはり今でも人は怖かった。
 排除されても仕方ない。自分は異物、限りなく本物に違い偽物なのだ。だから排除されても仕方ない。事実に反抗しても最早無意味。
(私は障害者同士でも交じり合うのは無理だけど)
 彼女の場合は、完全に信用した人物など今までいない。家族ですら根っこの部分で拒否している。
 未来でも信用する人はいないだろう、と少女は考える。だって。
(理解されないものだから)
 少女はこう考えている。この世にいる私達に対する人類は、理解した気になっている偽善者か、完全に見下すだけの健全者か、あるいは自分のように諦めて逃げ続けているだけの負け犬か、それとも全力で無意味なことに抵抗し続ける阿呆。それだけだ。
 発作を起こしたり、うつ状態が甘えだとか、逃げだとかいう人間は多い。
 いつだったかそんなことを嘲笑いながら言われたことがある。
 実際逃げている。それは認めたうえで彼女は一度こう返した。
「あんたみたいな無知に何がわかるの? だったら実際患ってみるといいよ。そうだね、そこの階段から頭を強く打ち付けるような感じで落ちてみてよ。そうすれば分かるよ」
 相手は笑いをやめ、睨んだ。障害者に馬鹿にされたのが気に入らなかったようだった。もうその時点で少女は関心を失い、相手するのをやめた。何を言われようが「はいはい」だけで流し、終始相手をしなかった。
「……おーい、ホームルーム始まるよ?」
「……ぅん。ありがと」
 会話はそれだけ。最低限でいい。
 これからも少女は逃げていくだろう。彼女は、一つだけいいたいことがあった。
 それは。
「逃げることの、何がわるいんですか? 現実は作り物とは違います。誰もが立ち向かえるなんていう幻想を抱いているのなら、そんな馬鹿なものは捨ててください。現実を見てください。強者の立場ではなく、弱者の立場で」

後書き

未設定


作者 Free Space
投稿日:2011/12/24 11:55:00
更新日:2011/12/24 11:55:00
『壊せない壁』の著作権は、すべて作者 Free Space様に属します。
HP『未設定

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