小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説鍛錬室

   小説投稿室へ
運営方針(感想&評価について)

読了ボタンへ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

作品ID:575

こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約1899文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚


読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「養殖」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(171)・読中(4)・読止(0)・一般PV数(889)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)

まっしぶ ■a10 ワーディルト 


小説の属性:一般小説 / 未選択 / お気軽感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

養殖

作品紹介

 とある授業で書いた短編です。
 おそらく日の目を見ることはもうないと思うので、一思いに投稿します。
 
 元々授業のお題が「既存の短歌の一部を変えて小説を考える」だったので、一番最初に書いておきました。題名はつけていなかったのですが、授業の時に先生に聞かれたのでひねり出しました。とっさでした。


 これはこれ(やかんがコイに)化けるかも赤いもみじの葉っぱをあげる

 家の近くに変な場所がある。廃工場がそのまま放置されていて、その周りにいくつものガラクタの山がある場所だ。少し不気味だが、小さい時からの遊び場でもある。そういえば久しく行っていない。
 学校からの帰り道、ふと思い出していつもとは違う道を行く。幼い記憶を頼りに歩いていくと、規則正しく続いていた細い路地が急に行き止まりに変わる。別の道を行くと、カーブが一周して元の場所に戻ってきてしまった。むかし城下町だったせいか、このあたりの道はなかなか厳しい。
 やっと廃工場のガラクタ山に到着した。と、ちょうどヘルメットをかぶった人が工場に入っていくのを見かけた。こっそり窓からのぞいてみれば、昔と同じで中もガラクタでいっぱいだった。
 ヘルメットの人はガラクタを選んできては、隅のほうにある機械に放りこんでいる。その機械だけは最近持ってきたようで、ガラクタの中でピカピカと輝いていた。
 左の二つの口からそれぞれガラクタを入れると、右の口からなにかがごろりと出てくる。床に落ちたそれはぴしゃりとはねた。
 魚だ。
 暗くてシルエットしか見えないから種類まではわからない。ガラクタを二つ入れるたびに魚が出てくる。
 あの細長いシルエットはサンマ? くねくねしているのはウナギ? ぱかっと開いた口が鋭い。サケだろうか。あの小さいのはイワナ? 平べったいのはヒラメか、カレイかも。あ、大きい。マグロかな……。
 ぼんやりとみている間に日が落ちてきた。
 薄暗い廃工場の中で電気も点けずに、ヘルメットはどこからか四角い箱を取り出すと、魚を入れて去っていった。
 私も家に帰って金魚にえさをあげた。
 うちの金魚は大きな水槽に一匹だけ、ちいさな赤い体を泳がせている。前はもっとたくさんいたのだけれど、どんどん減って一匹になってしまった。
 木枯らしの吹く季節に金魚を見ると、もの悲しくなるのはなんでなんだろう。
 それからしばらく、ヘルメットは不定期にやってきては魚を生産していた。いったいどこに持っていくのだろう。私はガラクタの魚が市場で売られているのを想像した。
 ……ライトの下でキラキラ光る魚。ヘルメットがエプロンをつけて声を張り上げる姿は、どこか喧騒の中に馴染んでいる。夕方、何も知らない奥さんがサンマを買って帰り、魚焼きでこんがり焼いて……。
 おなかが空いてきた。
 冷蔵庫をあさりに行くついでに、金魚にえさをあげようと水槽を見た。外海にポツンと浮いているうきのように、赤い物体が力なく浮いている。私が「あっ。」と声をあげても、ガラクタの魚のように跳ねたりはしなかった。いつの間にいってしまったのだろう。
 呆然と赤いうきを見ていても仕方がなく、庭のもみじの木の下に埋めてやることにする。去年の夏まつりからの付き合いだった、一年ちょっと生活を共にした金魚。同じ赤色の中に埋もれてしまえばさみしくないだろう。
 もしかしたら来年のもみじには、こいつの赤色が混じっているかもしれない。そんなことを考えながら土をかぶせてやる。墓標は立てなかった。
 埋め終わったそばから真っ赤なもみじの葉っぱが落ちてきて、どこに埋めてやったか定かではなくなってしまった。
 わたしはふと、あの魚生産機を思い出した。
 あれは果たして、思い通りの魚を出せるものなのだろうか?
 もみじの葉っぱを引っつかんで廃工場に潜入する。ヘルメットはいない。
 わたしは手近にあったやかんを拾い上げて、もみじと共に機械へ放りこむ。なかなか動かない。スイッチを入れないといけないのだ。
 薄暗い廃工場の中で、手探りで、小さなボタンを探した。
 しばらくして右上にあったスイッチを発見すると、ためらいなく押した。思った以上に大きい音がして、やかんともみじが吸いこまれていく。
 その時、ガラクタの中で声がした。
「あ、こらっ。」
 ヘルメットに違いない。いなかったのではなく休憩でもしていたのだろう。
 私は振り返ることなく一目散に逃げだした。
 家に帰って玄関にカギをかけると、腰が抜けたようにしりもちをつく。

 それ以降、ヘルメットを見かけたことはない。あのガラクタの山も撤去され始めたから、廃工場もなくなってしまうかもしれない。
 あのやかんともみじはどんな魚になったのだろう。コイだといいな。錦鯉より真っ赤なコイ。日本庭園の広い池で優雅に尻尾を振っては泳ぐ。
 どうせなら長生きしておくれ。

後書き

未設定


作者 水沢妃
投稿日:2016/04/09 19:24:37
更新日:2016/04/09 19:24:37
『養殖』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。
HP『mukuru

読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!

読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

自己評価


感想&批評

作品ID:575

小説の冒頭へ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)

管理人ブログ
(※注意:当サイトと関係ない記事も多くあります)

リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み