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作品ID:589

こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「初投稿・初心者」です。

文字数約5925文字 読了時間約3分 原稿用紙約8枚


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遠藤 敬之 


静かな海~惑星アルビス物語 続き その➁

作品紹介




ゾーイは語り続けた。
「君が疑問に思っていたことに答えをあげるよ。二十歳までに選ばれた「伴侶」と婚姻を結ぶ訳は…その十二人の遺伝子の組み合わせを「活かす」ためなんだ。君たちは自分たちが生まれた遺伝子を次の世代に残す「形だけの夫婦」で、それを不自然に思わせないための一種の「システム」なのさ。特に優れた組み合わせの場合には、代理ではなく実際の夫婦のように子供を産ませることもあるようだがね。いずれにしても、まともな沙汰ではないのは確かさ。科学者たちのいわば「実験」で、しかも国を治めやすくする手段なんだ」

「…『子供を産んだ』後の僕たちは、じゃあ、どうなるの…」低い声で尋ねるカルにゾーイはやや顔をそむけて言った。
「そこがアルビス政府の暗黒面でね…君たちはアルビスの海底都市で幸せに暮らしていると内外には公表されている…でも実際は」
「実際は、他の星に売られるんだ…。古代地球にもあった悪しき習慣、人身売買と言うやつさ。君たちは見てくれが良い。運動能力、身体能力、どれも抜群だ。だから…」

「もういい、沢山だ!」ゾーイの話を聞くのが堪え難くなったカルは、走った…。と言っても狭い島のこと、防風林のような小さな林に駆け込んで暫く走ると樹にぶつかった…その樹を見つめて我に返ったカルは激しく泣いた。

「カル、いつか知って貰う必要があったとはいえ辛い話を聞かせてすまなかったね…」ゾーイが静かにカルの後を追って泣き止むのを待ってから労りを込めて言った。

「君が海洋生物を調査して気付いたことが幾つかあるだろう。それは今の話にも関係あるはずなんだが…。君の意見を聞かせて貰いたいけれど、また日を改めよう」

カルは首を振ると、涙をぬぐって答えた、
「いいんだ、ごめんね泣いたりして。僕が気付いたのは、ゾーイに聞いていた以前の海の生物と、今の生物とのほんの些細な…差があることなんだ。他の生物にも見られるのだけどね…。生物は変化していくみたいだ…恐らく環境によって。細かいことなら他にもあるけど…。そうだね、海と同じだ、大海洋には変化がある。でも僕たち『アルビス人には変化が無い』…ノットゥルノの海辺みたいに…静かな海みたいに…」

「カル、以前、俺は言ったよな、俺には秘密があるって。その話もしようか」

「うん」

「俺は銀河連盟のある機関の人間なんだ。この星にコールドスリープの生き残りとして生まれた漁師であるのは本当さ。でも俺は連盟のためにこの星を調査しているのさ…」

ゾーイの秘密

次々とゾーイが話すことに、めまいさえ覚えるカルであった。ゾーイは話し続けた。

俺が15歳になった年に、首都コハンに呼ばれたんだ。その頃一緒に漁に出ていた親方に連れられてね。突然のことで狐につままれたみたいな気持ちだったよ。俺は初めてフリーシャトルに乗って、コハンに行った。人が大勢いて驚いたな。いかにも都市っていう感じでさ。「待ち合わせ場所」に着くと、ロボットが待っていた。W23と同じ型のやつさ。で、俺だけがフリーシャトルに乗せられてどこかの建物に着いたんだ。
そこはアルビス政府も直接には関与出来ないらしい領地でね、がっしりとした造りの10階建ての建物が自然な感じの木々や池を配した庭に囲まれていたっけ。俺はロボットに案内されるまま、その建物の最上階、10階の一室に通されたんだ。

俺はそこで銀河連盟の中でも特殊な仕事をしているという人物と会ったのさ。彼の名は…今は伏せておこう。ただ、その人は銀河連盟に加盟している星の「調整」を行う極秘の機関に属しているということを教えておくよ。

カルは少し沈んでいた表情を明るくさせてゾーイを見ていた。

「その人」は俺が半人前の漁師になるまでに受けた教育の記録を全て持っていた。そして俺の…それこそ俺自身も知らないすべてのことを知っているようだったよ。彼は、俺に頼みたいことがあるというんだ。それを受けるのも断るのも俺次第だと。ただ断るのなら、今日のことを全て忘れるようにと。

彼はアルビスで行われていることを調査していた。その補佐を俺に頼みたいというのだ。漁師の仕事を続けながら勿論誰にも悟られないように。そして銀河連盟がアルビスにどういう措置を取るか、そのための調査だと。
調査をするためには色々な知識や能力がいる。だからその訓練を半年受けるように言われた。

正直なところ最初は戸惑ったよ。でも思ったんだ、もしこのアルビスという惑星で何か…銀河連盟が不信を抱くような芳しからぬことが行われているのなら、銀河系の「最後の良心」と呼ばれている銀河連盟の役に立つ仕事、多くの住人たちのためになるだろう仕事をするのが俺の「使命」のように思えたんだ。そして俺にその能力があると思われたのが誇らしくさえあった…だから俺は引き受けることにしたんだ、訓練を受け、彼の調査の補佐を引き受ける、とね。

カルの決意

ゾーイの話はカルにある種の希望を与えた。そしてゾーイと共有した「秘密」を胸に、自分がこれからどうすべきか決めなければならないことを痛感した。

「ゾーイ、僕たちが出会ってかれこれ三年になる。ゾーイはもう…十数年もアルビスの事を「調査」してきたんだね。調査の成果も上がっているよね?…それでもまだ調べなければならないことがあるの?」

「そうさな、カル、君がアルビスの慣習に疑問を抱いていると知った時、連盟に君を紹介すべきなのじゃないかとも思ったんだが流石に時期尚早と感じたんだ。もう君が事実を…受け入れがたいだろう現実を受け止められると思って今日、話すことにしたのさ。調査の話だけどね、そろそろ大詰めになると思う。そして君がここ数年調べていた海洋の「調査」の成果は、なかなかなものだ、俺とは着眼点が違うしね。そこにまた価値があるんだ。その結果を携えて君と一度連盟の「あの人」に会おうかと思っているんだ。どうだろう。考えてみてはもらえまいか」

カルは迷わなかった。

「僕、一緒に行くよ。僕はアルビスの「真実」を知りたい。そう、知って…それから自分がどう生きるかを決めたいんだ」

ゾーイはカルの真剣な様子を見て、そしてうなずいた。

「分かった。早急に司令に連絡を取る。多分近いうちに一緒にコハンに行くことになるだろう。司令っていうのは「あの人」、俺の上司のことさ」

ゾーイとカルは漁船に乗り込んで無人島を後にした。ノットゥルノに着くまで二人とも黙っていた。それぞれの考えに身をゆだねていたのだろう。船着き場に船を繋留したあとゾーイとカルは海岸沿いをいつものように歩いた。

「じゃあ僕も家に帰るね。ゾーイ…また来るよ」

ゾーイの家に着くとカルはそれだけ言って自分の家へと帰っていった。ゾーイはいつものようにウィンクしてみせた。

それは始まりの終わりで、また新たな始まりを告げる日であった。

カル、司令と会う

カルは、十数年前にゾーイも訪れた居間にいた。お供はW23で、これは「司令」の要望であった。ゾーイから様々な「事実」を告げられて数日後、ゾーイはカルに「司令」と会うように伝えたのだった。カルは決意を胸に、そしてその鼓動を感じながら首都コハンに向かい、迎えのシャトルカーに乗り込んだ。目的の建物に着くと、カルは不思議な既視感に襲われた。

「やあ、君がカルだね。W23も久しぶりだな」司令はきさくな様子でカルに話しかけた。司令がWのことを知っているのに驚いたカルに重ねて、
「私は銀河連盟のメル司令だ。宜しく頼むよ、カル」
「始めまして、メル司令。宜しくお願いいたします」カルは挨拶した。メル司令はカルたちに座るように促した。メル司令は全く、変わった人物だった。アルビスでは際立った異彩を放つ容姿だろう。中くらいの長さの見事な銀髪に色白だが精悍そうな顔つき。目は灰色がかった緑色で穏やかな表情だが、観察力のあるものならその目に湛えられた闘志と知性に気づくだろう。中肉中背だが、実際より大きく見える。年齢は分からない。人類ではないのかもしれない。只者ではないと思わせる何かが司令にはあった。

メル司令はキールをカルに奨め、自分もグラスを口にした。

「そう、例えばこのキールだがね。カル君、きみはこのアルビスの経済がキールに支えられている、そんなふうに習っただろう。それを信じているかね」

「はい、僕は…ゾーイ…さんからも話を聞いたので…その…人身売買について…ですからそうは思っていません。それだけではないものも感じています」

そしてカルは自分が海洋を調査していて疑問に思ったことをメル司令に伝えた。海洋生物の進化や生態系の変化が少しだが見られること、そして海が、とりわけノットゥルノの海岸に近づくほど、きわめて人工的であること、などをである。

メル司令は満足そうにうなずいた。
「君には調査官の素質が十二分にあるね、カル君。ゾーイが君と出会ったのは偶然ではあったが、必然であったのだろうな。W23も君の素質を見抜いていたのだろう、だから手を加えた教育プログラムを君に習わせたのだ…。カル君、W23は、銀河連盟が手掛けているプロジェクトを支える役割を担っているロボットの一体でね、非常に優れた特質を身につけているのだ。」

カルは改めて、初めて見るような心持ちでWと呼んでいたそのロボットを見た。Wは連盟の仕事をしていたのだ…誰にも気づかれずに。

メル司令は簡潔に、カルの両親たちのことも教えてくれた。子供を養育するアルビスの人間は、その子供が20歳になると首都に呼ばれ、科学者の元へ行く。そして記憶を「削除」され、一歳くらいの子供の親の年齢に「戻され」、そして再び別の子供を養育するのだと。「父親」も「母親」も、20年弱、ある子供の両親として生活し、また「記憶を消され、年齢を変えられて」次の子供の親となる。勿論彼らは人間だが、きわめて特殊な身体を持っているらしい。その詳細についてはメル司令もまだつかんではいないという。

カルはゾーイに聞いた話を受けた時のショックに似た感覚にふたたび襲われかけたが、直ぐに立ち直った。そして司令に言った。

「僕がやるべきことを教えて下さい。そして僕に何が出来るのか、これから考えていきたいのです」

メル司令は腕を組んでカルを見ていた。
「君はどんなことでもやってのける、その位の決意を持っているかい?これから君を待っているのはとてつもなく過酷な事実かもしれない。それでもいいと言えるか」
カルはメル司令の眼を見て言った。
「はい」
メル司令はカルの肩に静かに手を置いて、言うのだった。

「君には勇気がある、とW23もゾーイも言っている。私もそう思うよ。これから君に訓練を受けて貰う事にしよう。決して楽ではないが、君なら大丈夫だろう。それからのことは訓練後にまた話そう。今日は君と会えて良かったよ、カル君。W23、カル君を頼んだよ。訓練についてはW23を通して追って指示させてもらうよ」

カルとW23が立ち上がって司令に礼をすると、司令も立ち上がって会釈を返した。カルたちは部屋を出た。

ゾーイの海底探索

一方ゾーイの方も、ただ漫然と過ごしていたわけでは無かった。恐らくこれが自分にとって最後の、惑星アルビスでの調査の仕事になるだろう「海底探索」に総力をあげてかかることになっていたのである。漁師として働きながらの調査は決して楽では無かったが、今までもゾーイは結果を出し続けていた。アルビスのごく少数の中枢しか知ることのない事実を幾つも調べ上げていたのだ…

アルビスの海は水深が平均1000メートルであった。しかし、ゾーイが調査のために潜水艦を用意することは不可能であったから、海底都市の存在の「有無」を確認することは出来なかったのである。

それが、この程銀河連盟に所属する一惑星で製作された、海底探査において「生物に反応しその数を正確に把握しうる」特殊なロボット、テストゥードスのおかげで、ついにアルビスの海底を調べることが可能となったのだ。

テストゥードスは語源となっている地球のラテン語、亀を意味する通り、亀の甲羅を模した形のロボットで、映像記録機能も搭載されていた。あらゆる生命反応を感知し、それぞれの種の数も把握できる高性能ロボットである。

連盟がそのテストゥードスを相当数入手したことはしかし、製作関係者たちとその惑星の中枢のみが知る事実であった。メル司令は海底を調査する必要の高い星をリストアップさせ、惑星アルビスの優先度を高めにした。かくして、ゾーイの元にテストゥードスが10体、送られてきたのである。

ゾーイは早速アルビスの大海洋に乗り出し、テストゥードスを5体、配置した。『生物反応の有無を確認すること』がこのたびの探索の目的である。そして同時に連盟はアルビスに対して『若者たち』が実際にはどこにいるのかを証明する義務を課すであろう。それはカルたちを始め子供たちを救うことに繋がるはずだ。また今までどの位の期間に亘ってアルビスの首脳部が、人民の命をコントロールしてきたか…その「罪」の是非を問えるのである。

ゾーイは危険な任務に就いていた。しかし、以前とは違う気持ちでこの最重要任務にあたろうとしているゾーイである。カルという自分の後継者でもあり、同時に相棒ともいえる存在が、ゾーイにとって大きくなっていたからだ。

ゾーイが調査を開始して五か月ばかり経った頃、カルの調査員になるための訓練も終了した。カルは人並み以上の能力とまた忍耐力の持ち主であり、厳しい訓練に耐え、そしてさまざまな技術も習得した。彼にはまだ学ぶべきことはあったが、調査をするに十分な能力を身に着けたと、メル司令に認められたのである。

そしてゾーイの調査にも進展が見られた。数か月に亘ってテストゥードス10体全てを使い大海洋の海底を探索させたゾーイは、ついに重大な事実をテストゥードスからの通信で知ることになったのだ。

『海底都市は存在』していた。大海洋の群島近くの200メートルほどの海底に鮮明に映し出されたその都市には生物反応が一種類あり、数はおよそ1000体であった。
作者 nekobun
投稿日:2016/10/09 15:50:32
更新日:2016/10/09 21:06:08
『静かな海~惑星アルビス物語 続き その➁』の著作権は、すべて作者 nekobun様に属します。
HP『星空文庫

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