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作品ID:106
「炎に従う〈はずの〉召喚獣」へ

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炎に従う〈はずの〉召喚獣

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


空への祈りと祝福。

前の話 目次 次の話

 ずっと続く、平坦な車道を一台の軽自動車が駆け抜ける。白い車体の運転席に座っているのは桐生ハツカ。ハンドルを握るその表情はどこか楽しげだった。

 助手席にはオーティスが居る。その膝には桐生ネオが。ネオはオーティスの髪を弄って遊んでいた。……妙にオーティスとネオが並んでいると姉妹に見えてしまう。



 「にしてもハツカ。かれこれ一時間半すこし過ぎたぐらい、運転してるけれど大丈夫?」

 車内に流れる沈黙がいい加減、耐えられなくなったので自分が口を開く。



 「キュリスの心配はありがたいけれど、大丈夫。何とかなってるから」

 「そう」

 それっきり、ハツカの反応もなく自分も話を切り出すことはなかった。



 「ねーオーティス。まだ? はやくフェクトに会いたいー」

 オーティスの髪を弄るのも飽きたのか、ネオが聞く。



 〈これは、ただ単に車に乗るのが嫌になっただけだろう〉

 オーティスがそう考えているのをなんとなく分かってしまい、少しだけ笑みの形に顔が歪む。



 「キュリス。悪い。ネオを頼む」

 「オーケー。ほら、ネオちゃん。おいで」

 オーティスは元々、子供という生命体には慣れていない。こういう子守りというのにはキュリスやフェクトのような奴が一番いいと考えてもいる。



 「? キュリス姉ちゃん、遊んでくれるの!?」

 凄く輝く目にまぶしいなぁ、とか考えながらも自分は話を続ける。



 「じゃあね……」

 水を使って遊ぼうか、と言おうとしたときだったか?



 稲妻が駆け抜ける。コンクリート製の車道に縦横無尽に走る亀裂。それを見たハツカは慌てて車を急停止。車から降りる。それをオーティスとキュリスは瞬時に理解。

 最悪の場合、稲妻に車があたり車が破壊、もしくは爆発の事態に備えて防御体勢をとる。



 〈きゅり、す?」

 「スカラ!?」

 この稲妻にはスカラの力が関係していると考えてまず間違いない。彼女の天候を自由自在に変える力ならば、稲妻を走らせることもできるだろう。

 だが何かがおかしい。スカラの声に異変を感じる。スカラの声はまるで今にも居なくなりそうな色を帯びていて。

 そういえば、今この場にはスカラが居ない。何故?

 自分が考えている間にも稲妻は襲ってくる。狂いもなく、自分を追いかけてくる。



 「スカラ姉ちゃん? キュリス姉ちゃん、スカラ姉ちゃん、どうしたの?」

 キュリスに抱かれたネオが首を傾げる。キュリスたちはまだ現状を理解できている。だがネオはそうじゃない。



 「大丈夫だから」

 そう言うのが精一杯だった。



 「キュリス。ネオとハツカを頼むぞ」

 オーティスの言葉にいつの間にか震えていた体に意識を戻す。



 「ダメだよ、だってオーティスはフェクと暴走のときに能力を使いすぎてまだ回復してないじゃないの!」

 「大丈夫だから、って言ってただろう? キュリスがそう言うなら大丈夫だ」

 背中を向けているオーティスはキュリスのほうに首だけを向ける。

 その表情は笑っていた。



 「分かった」

 「オーティス姉、どうするの?」

 「大丈夫だよネオ」

 ネオの頭に右手を乗せますます笑みを深めるオーティスは擬人化を解く。



 「大丈夫だから」

 「うん」

 「必ず帰ってくるから」

 「うん」

 「行ってくる」

 「いいよ」

 オーティスの擬人化をといた姿の特徴である翼が羽ばたく。翼は風を切るだけじゃない。空まで切り裂く勢いでオーティスを空へと舞い上がらせる。



 空から贈られる祝福はオーティスにとって試練となるのかならぬのか。

 

 〈きゅり、す。オーティス。有難うだけは言っておくね〉

 

 〈なかなか進めないな……〉

 オーティスが進む上空では稲妻が走っており暗雲が立ち込め、視界が悪い。

 尚且つその稲妻が翼をかすめ、前に進めない。

 だが視界が開き、稲妻も消え去った。

 何故?



 〈? スカラの能力!?〉

 考え付いた答えはスカラの能力だった。





 〈有難う〉

 



 スカラの声が聞こえたような気がした。

 だがそれっきりスカラの声はしなかった。

 思い浮かぶ単語は。



 「まさか、スカラが……亡くなった?」

 空中停止。スカラの声が聞こえなくなったのはスカラが……。





 そのころ地上では。

 稲妻が降り注ぐのを止め、変わりに。

 青い空が見えていた。立ち込めていた暗雲などなかったかのように。

 だがキュリスにはスカラがどうなったか知っていた。だからこの晴天も受け入れる事はなかった。

 この晴天は私たちじゃなくてスカラに捧げるものだと。

 そう考える事しかできなかった。

 そして。



 〈もしもこれがスカラからの、空からの祝福だと考えることができるのなら〉

 それが私という、キュリスタクティスという存在ができるのなら。



 〈願わくば、この祈りもスカラに届きますように〉

 両手を組み合わせ、空へと祈りを捧げるキュリスの姿があった。

後書き


作者:フェクト
投稿日:2010/01/09 11:28
更新日:2010/01/09 11:28
『炎に従う〈はずの〉召喚獣』の著作権は、すべて作者 フェクト様に属します。

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作品ID:106
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