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作品ID:1332
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第三章「街道」:第3話「買い物」

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第3章.第3話「買い物」



 宝石を売り払ったが、まだ正午にもなっていない。

 これからもう一度街に繰り出すつもりだが、ビジネススーツでは目立つので、一旦、宿に戻って服を着替える。



 明日にはオステンシュタットを出発するつもりなので、武器や道具類でいいものがあれば買いたいし、折角の異世界の都会だから、いろいろ文化的な違いも確認しておきたいと思っていた。

 旅人の止まり木亭の女将であるフランカに武器屋や道具屋の場所を聞いてみた。

 すると、武器屋については、「ディルクっていうドワーフがやっている武器屋がこの街で一番なんだけど、結構気難しくって、気に入らない人には売らないっていう感じなの。まあ、一度試しに行ってみたら」と教えてくれた。

 俺はドワーフと話したことが無かったので、それも面白いかと思い、ディルクの店に向かった。

 十分ほど歩くとディルクの店に到着した。

 店に入るが、店番もおらず、オステンシュタットで一番という割には、店舗は小ぢんまりとしており、武器もあまり並んでいない。



「すいません。武器を買いたいんですか。」と声を掛けると、顔中髭に覆われた背の低いがっしりとした体の男が出てきた。如何にもドワーフっていう感じだ。

 俺は初めて間近で見るドワーフに興味津津だったが、気難しいと聞いていたので、できるだけ下手に出るつもりでいる。

 良く見ると街一番と聞いていた割には若く見え、人間の30歳代後半くらいの感じだ。鑑定して見ると、年齢は87歳と出ている。ドワーフは長命種だから若く見えるのかもしれない。



 彼は「武器を売ってほしいだと。手ぇ見せてみろ」と俺が理解できないことを言ってきた。

 若干パニクるが、言われるまま、手を見せる。

 すると今度は「今持っている剣を振ってみせろ」と言うので、なんでこんなことしなきゃいけないんだと思いながらも、彼の迫力に負けて武器を構えて素振りをする。

 彼は少し難しい顔になり、「おい、武器を持って何日だ。師匠はだれだ」と言ってくる。

 一瞬、どう答えようかと悩むが、正直に「武器を持って、2ヶ月半くらいです。師匠はいません。我流です」と答えた。

 彼は突然、「いくら出せる」と言うが、俺は話について行けず呆けていた。

 すると「予算はいくらかって聞いているだよ!」と怒鳴るので、考えていた最高金額の五百Gであることを思わず口に出してしまった。

 彼は「待ってろ」と言って、裏に引っ込んでしまう。



 相手の勢いに負けて、つい言ってしまったが、有名店で金貨五百枚などと言えば、折角の偽装工作が意味をなさなくなるかもしれない。

 五分ほど一人で悶えながら後悔していると、ディルクが一振りのツーハンドソードを持ってきた。



「ただの鋼のツーハンドソードだ。五十Gだ」と言って、その剣を渡してきた。

 鑑定してみると、



 ツーハンドソード(銘無:スチール製)

  攻撃120、命中50、必要STR400、レンジ6ft、長さ5.0ft、重量6.0lb



 今、使っている剣より2割くらい性能が高いのに軽くなっている。



「お前の腕では、これよりいい武器を持っても意味がねぇ。もう少し腕を上げたら、もう一回来い。もっといい武器を売ってやる」



「ありがとうございます。でも明日この街を出て東に行くんです」



「どこへ行くかは知らんが、腕を上げたら、おれんところに来い。もし、王都ドライセンブルクに行くことがあるなら、デュオニュースのところにこの剣を持って行きな。奴がお前の腕に合う武器を見繕ってくれるだろう」と別の職人を紹介してくれた。



 俺は手持ちの五十Gを支払い、今使っている剣を売ろうとすると、



「そんなできの悪い剣、材料にもならねぇわ。そこらの武器屋で売って来な。そっちの方が高く売れるだろうよ」と、下取りを拒否されてしまった。



 仕方がないので礼を言ってから、近くの武器屋に行く。結局五Gで売却することができた。

 ギルドに戻り、金を下ろした後、防具屋に向かった。

 鎧は調整には通常二、三日かかるので最初から買う気が無い。だが、レッグガードやガントレットなどの部分防御用の防具なんかを買いたいと思っている。

 ディルクの武器を背負って防具屋に入ると、主人であろう三十歳代の人間の男が、「おい、兄ちゃん。そ、それ、ディルクの旦那の剣じゃねぇのか」と驚いている。



 俺が肯くと、「ほう、若いのにあの旦那に気に入られたのか。で、何がほしい。うちも腕のいい冒険者にはいいもの用意するぜ」と言ってくる。

 フランカも言っていたが、気に入られるのか難しいのだろうか。とりあえず欲しい防具を言うと、「わかった。ちょっと待ってろ」と言って裏に取りにいった。

 五分ほどして、二、三種類の防具を持ってきた。

 いろいろ試してみて、気に入ったものを購入していく。



 ハードレザーガントレット :防御20、重量0.5lb

 ハードレザーレッグアーマー:防御25、重量2.5lb



 通常のものより、かなり防御力が高い。

 だが、二つで十五Gとかなりいい値段だ。命には代えられないので、そのまま購入した。

 次に道具屋に行き、マントを新しいものに替える。

 今持っているマントがかなり傷んできたこともあるが、変装の意味も含めている。

 今までの茶色のマントから、黒い革のマントに買い替える。これで大分印象が変わるだろう。

 後は旅に必要なものも買えたので、宿に戻ることにした。

 宿に戻る途中、檻に入れられた人間を載せた馬車とすれ違った。

 近くの人に聞いてみると、「ありゃ、奴隷だよ」と教えてくれた。そして、



「ヘルマン商会っていう奴隷商が東のプルゼニから買い付けてきたんじゃないか。それにしてもあんた奴隷を見るのは初めてかい。どこの田舎の出だい?」

 俺は「ああ、昨日初めてオステンシュタットに着いたんだ。その前はずっと南部の田舎にいてね。そういうことに疎いんだよ」と言って誤魔化した。



(奴隷か……)



 アントンたちの話にも出ていたが、本当に奴隷がいた。奴隷制度が原則廃止された現代人としては複雑な思いがするが、十七、八世紀頃のアフリカで人狩りをして奴隷にするような酷い奴隷制と同じか判断できない。

 ちょっと興味をもったので、「ちなみに、奴隷って借金の方に取られてくる奴ばかりなのか?」と聞くと、



「いや、罪を犯した犯罪奴隷もいる。最近この国じゃ見かけないが、戦争で捕虜になった戦争奴隷もいるな」と教えてくれた。

 俺は感心した風を装い、「ちなみに奴隷っていくらぐらいするんだい」と、ついでに聞いてみた。

 彼は笑いながら、「そりゃピンキリだよ。別嬪の女なら金貨数百枚はするし、犯罪奴隷なら金貨20枚くらいでも手に入ることがあるそうだぜ」



「まあ、どっちにしても俺には縁がないか」と言ってその場を離れていった。



(数百Gで手に入るのか)



 この逃亡生活をどうにかしないと買うに買えないが、今の俺なら五、六人は楽勝で買える。実現するかどうか別として、男としてはちょっと憧れてしまう。人間的にどうかと思わないでもないが。

 奴隷達を見送り、止まり木亭に戻る。



 まだ午後三時頃、明日からどうするか考えることにした。

 まずは、行き先をどうするか。



 ここから東は隣の国のプルゼニ王国。

 どういった国かあまり情報が無いが、ゴスラーでプルゼニに逃げると噂を流してもらうので、こちらに行く選択肢はない。



 北はローゼンハイム領。

 有名な龍殺しの英雄が治める土地だ。

 ローゼンハイムはここ最近かなり発展してきているようで、人材はいくらでも必要だろう。行けば仕事にあぶれることはない。

 それにローゼンハイム騎士団は平民だろうと元奴隷だろうと優秀であれば採用してもらえる実力主義の騎士団だそうだ。ここに入れればかなり安全だろうし、うまく鍛えられれば返り討ちできるかもしれない。

 だが、ローゼンハイム領は人口が少ない。よそ者は割とすぐにわかってしまうので、盗賊たちが早期に向かってきた場合、対処する時間が少なくなる可能性がある。



 最後の選択肢は西だ。

 西は王都ドライセンブルク、商都ノイレンシュタットがある。ノイレンシュタットは人口十万人の大都市だし、その先にもいろいろな都市への道が拓けている。やはり、西に行くのがいいだろう。

 その先については、これから情報を集めればよく、今決める必要はないだろう。

 西に行くとして、どうやっていくかだ。

 クエストを受けずに冒険者が遠くへ移動するのは不審に思われる可能性がある。

 今回のようにクエストとして移動するのが一番目立たないが、あまりなじみのないギルドでクエストを受けると逆に目立つ可能性がある。

 今回は何もクエストは受けず、宿での受け答えなどではクエストを受けた振りをするのが無難だろう。



 方針も決まったので、もう一つ考えている変装についてだ。

 俺の服装や装備はかなり一般的なもので特に目立つものはない。唯一つ目立つのはこの黒い髪の毛だ。

 今日1日結構気にして見ていたが、黒い髪はかなり少ない。全くいないというわけではないが、数十人に一人程度。今日も五人くらいしか見ていない。



 髪の色を金か茶に変えた方が安全だ。髪の色を変える方法で思いつくのはビールを使った脱色だ。この世界にもビールの一種のエールがある。確か炭酸で髪の色素が抜けるはずだから、エールでも色を抜くことはできるだろう。

 エールならすぐに手に入るし、茶色い髪になるから、かなり目立たないはずだ。



 ここで問題になるのは、本当にエールできれいに脱色できるかという問題だ。

 もし、中途半端な脱色でむらになってしまうのなら、余計目立つことになる。明日出発する予定なので実験する時間が無い。



 失敗のリスクを考えて、ここオステンシュタットでは勝負を掛けず、どこか落ち着いた先でやってみることにしよう。



 大体、方針が定まったので、ギルドに行き、地図を確認することにした。

 オステンシュタットから、西に向かうと最初の大都市は王都のドライセンブルクになる。ドライセンブルクまでは約二百マイル、約三百二十kmだそうだ。

 一日二十マイル進むとして、十日間かかる。

 西に向かう街道は、主要街道の「塩の大街道(ザルツシュトラーセン)」または単に「大街道(シュトラーセ)」とも呼ばれるが、この街道沿いには村や町が多い。宿泊場所には困らないようだ。



 ドライセンブルクは入域に制限があるそうで、長期の滞在は困難だそうだ。

 その先の商都ノイレンシュタットまで足を延ばす必要がある。

 ドライセンブルクとノイレンシュタットはわずか五マイルしか離れていないので、ノイレンシュタットを目的地としよう。



 夕食時にフランカから、武器の話が出たが、ディルクから武器が買えた話はあいまいに答えておいた。防具屋の話ではディルクは十人に一人くらいにしか武器を売らないそうで、ここでディルクから武器を買った話をすると目立つことになる。



 フランカもほとんどの冒険者が門前払いなので落ち込むなみたいなことを言っていたから、これで偽装できただろう。後は出発まで武器を見せないようにしておけば、それほど問題はない。



 ようやく方針も決まったので、ゆっくり夕食をとる。

 今日の夕食は、野鳥の香草焼と具材の入ったホワイトソースの上にチーズを載せてオーブンで焼いたグラタンそっくりの料理と温野菜にライ麦パン。

 やはり都会のオステンシュタットは競争があるのか、料理の質が高い。

 飲み物も試しにローゼンハイム酒というのを飲んでみたが、色は透明に近く、グラッパか熟成期間の短いマールのような葡萄酒系の蒸留酒だ。あと数年寝かせたものがほしいところだ。

 聞くところによるとさっきのグラタンぽい料理もローゼンハイムから伝わってきたもののようで、ローゼンハイムは食についても先進的なところのようだ。

 その他では、行政、軍制、税制などもかなり革新的なことをやっているとのことだ。落ち着いたら、一度ローゼンハイムに行ってみるのも面白いだろう。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/16 13:44
更新日:2012/12/16 13:44
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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