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作品ID:1797

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異界の口

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


二章 瑠璃 九

前の話 目次 次の話

 お祭りを純粋に楽しむ子どもに戻ったホタルを、穂高は微妙な顔をして見ていた。後で聞いたところによると、どうやら穂高もわたしと同じ感覚を持っていたらしい。
 急に大人になってしまった弟に、穂高はなんと言ってやればいいのか分からなかったのだ。
 それから、こうも言っていた。
 ホタルが怖いと。
 その意味はよく分からなかったが、ホタルが祭りを一通り楽しみ、花火もあらかた打ちあがった後、わたしたちは自然と駅の前にいた。
 元の場所に帰るのだ。
「じゃあね、兄さん。」
「元気でな、ホタル。」
 そっけない挨拶を交わし、兄弟は別れる。
 歩いて行くホタルを見て、わたしがどうしようか迷っていると、穂高が肩を押してきた。
「行ってやれ。どうせ、お前が外に出られる機会というのは極端に少ないのだから。」
 なんだか、優しくされている気がした。いや、穂高にかぎってそんなことは。
「いいのか?」
「いいさ。」
 わたしは、一度穂高をふり返ってから駆けだした。
 穂高は腕を組んで、駅の柱にもたれていた。

 夜中の海を走る列車は、まるで水槽のようだった。
「また来たいな。」
 ぽつりとつぶやいたホタルに、わたしは首をふってみせる。
「たぶん、もう来られない。」
「どうして?」
 わたしは、しどろもどろになりながらホタルを見る。
「その……。この列車が出るホームには、案内人の手引きがないと来られないんだ。だから、わたしが和宮から出ない限り、お前はこの列車に乗れない。」
 ホタルの知り合いはわたしと穂高くらいだ。穂高は和宮から出ようとしないから、必然的にわたしが送り迎え担当になる。
「そんなこと言わずに、迎えに来てよ。」
 ホタルは、小指を突き出す。
「約束。」
 ホタルに押されるように、わたしは人生で二度目の指きりげんまんをした。
 そうして、思い出した。かつて同じことをやっていたことを。穂高と約束したのだ、
「ずっとそばにいる。」
 と。
 あれはいつのことだったろう。もう、時間の流れなど忘れてしまった。だが、そのときの穂高はまだ可愛げがあった気がした。
「約束だよ。」
 念をこめて約束を交わすホタルが、かわいらしく見えた。
 しばらくすると、ホタルは寝入ってしまった。
 カーテンを閉めて、ぼうっと考える。
 命令ではなく、約束。そこにこだわっているということは、言の葉のことはまだ気にしているらしい。
 そりゃあそうだろう。彼は、これから先、いかなるときでもその力と共存していかなくてはならないのだから。
「君に幸あれ、ホタル。」

後書き


作者:水沢妃
投稿日:2016/08/13 22:34
更新日:2016/08/13 22:34
『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。

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