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桜の鬼

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


過去の記憶

前の話 目次 次の話

――人の時間で十年と少し前の事。



 鬼は迷い込んできた一人の少女と出会う。



「うぇー……ここ、どこー……」



 泣きながら桜の木の下にたどり着いたその少女。

「どうした?」



「ひぇ?」

 少女が後ろを見ると、紅の鬼が立っていた。桜の後ろから現れたらしく、まだ少し隠れている。

「だれー?」



 鬼は目を見開いて、問いかける。



「恐ろしくないのか?」

「だれがこわいの? おにさん?」



 涙がすっかり引いてしまった少女は鬼を見上げて逆に問い返す。



「人間は皆、鬼を恐れる。お前は怖くないのか?」

「こわくないよーあかいかみ、きれいだもん。おめめがきんいろでーきれいだもん」

「……綺麗……?」

「んー。おひさまにてらされて、すっごくきれいなのー! きらきらーって」

「きらきら?」

「ひがねー、ぼわーってもえてるみたいなのー。きれいなの!」

「火……」

「あ、おにさんなまえなぁに? おしえて!」



 次々に飛び出てくる幼いなりの賛辞に鬼は少々面食らう。

「名前は……俺にはない」

 そう、答えると、少女は目をまん丸にして口を開く。

「なんで? みーんなあるよ? おにさんにはなんでないの?」

「誰も、名前を呼ばないから、必要なかったし……」

「だーめ」

「え?」

「だめだよ! なまえ、いっちばんたいせつなんだよ!」

「大切……」

「だからさーちゃんがつけてあげる!」

「え、何を」

「なまえ!」

「ちょ、おい」

「えーとねー」



 鬼の話をかけらも聞かずに、真剣に考え始める自称「さーちゃん」。



「えーとねー、えーとねー。さくらがいっぱいだからー。うーんとーおめめとかみがひみたいだからー」

「ちょ、話を」

「あ、きめた! おうか!」

「は? おうか?」

「おうか! さくらの、ひ。きれいで、もえてて、ふわふわーで、ひらひらーで、きらきらだから!」

「桜の、火?」

 どこか呆然と、どこか陶然と、桜火と名付けられた鬼は、呟いた。



「うん!」

 満面の笑みで手を差し伸べる少女。恐る恐る、というのが一番しっくり来るような動作で、桜火は少女の前にしゃがみ、手を少女に向かって差し出す。

 少女はさらに笑みを深くして、ぎゅ、と手を握った。

「よろしくね、おうか!」



 桜火は少し喉に絡んだ、掠れたような声で小さく、

「よろしく……?」

 そう呟いた。



「これからはだれもよんでくれないなんてないよ! さーちゃんがよんであげるもん! さみしくないよね!」

 そう言って、風が吹いた。瞬間、桜火と少女を繋いでいた手は絶たれ、少女は人の男の腕に抱えられていた。

「やーぁ!」

「来なさい!」

 無理やり引きずり、桜火に憎しみのこもった視線を投げつける。

「よくも私の娘を! この、化け物如きが……!」



 驚愕に見開かれていた桜火の双眸はす、と眇められ、風が止まる。

 男は少女を抱えて身を翻して、桜火の目前から消えた。

「……か! おう、かー!」



 そして数瞬。風がまた吹き始め、万年桜を散らす。

「……おうか。……桜火……?」

 その小さな呟きは風に掻き消され、誰にも届くことはなかった。同じ存在ともいえる桜以外には。



――おうか――



――桜火――



 桜が啼く。







「……か! ……うか! 桜火! おい! 起きろー!」

「…………眠い」

「『眠い』じゃなくて。どうしたんだ? 珍しい」

「夢を……」

「え?」

「夢を見た」

「……どんな?」

「名前」

「は?」

「桜火ってはじめて呼ばれた時……の事」

「え、いつだ!」

「お前が……まだ小さい頃じゃないかな。ここに迷い込んできた女の子がいて……」

「へぇ?」

「有無を言わさずつけてくれたんだ」

「あはははそうなのか! ……って、あ?」

「どうした?」

「その女の子、泣いてたか?」

「ああ。迷子だったみたいだし」

「で、父親らしき人間に連れ去られていったとか」

「……なんで知ってる?」

 少々訝しげな顔になる桜火。

「いや、それ、もしかしなくても私じゃないか?」

「え」

「何か今言われるまで忘れてた気がするけどそれは絶対私だー!」



 二人は顔を見合わせて、噴出した。

「偶然かな」

「さぁ」

「でも、何かあったらいいな。運命とか何とか仰々しくなくて、ぴったりな何か……なんだろう?」

「『何か』でいいじゃないか」

「……その偶然にも似た『何か』に私は感謝するぞ! 桜火にまた会えた!」



 桜火はふわりと、桜のように笑って

「そうだな。俺も嬉しい」

 風のように囁いた。



 咲はいつの間にか沈みかけている夕日の背だけではないだろう、顔が思いっきり赤い。耳まで赤い。

「……反則だ」



 桜火は心底不思議そうに尋ねる。

「何故? 何が?」

「ううううううう煩い! 放っておいてくれー!」

「だから何なんだ」



 桜の鬼の住む森に、咲の「うるさーい!」という声と桜火の「だから何なんだ?」という声が響き渡る。







――オン、オン!

後書き


作者:久遠
投稿日:2009/12/24 21:35
更新日:2010/01/21 17:03
『桜の鬼』の著作権は、すべて作者 久遠様に属します。

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